作業療法士の為の幸福学、今回はアラン、ラッセル、ヒルティの3大幸福論の共通項について整理し、作業療法との接点について述べていきたいと思います。
3大幸福論では共通して語られている内容、キーワードがあります。それは「今を生きる」「没頭する」「仕事」です。
いずれも好きなこと、やりたいこと、やるべきこと、意味を感じることに体を使って没頭することが幸福に繋がると語っています。
「没頭」という状態はまさに「今を生きること」であり、過去への後悔や執着、未来に対する不安に過度に振り回されていない状態、生き方と言えます。
これはマインドフルネス、フロー、エンゲージメントとしてポジティブ心理学や幸福学で使われるワードに対応するものと僕は考えています。
「仕事」についてはヒルティの幸福論で述べたところですが、アラン、ラッセルも幸福論の中にそれを取り上げています。
アランの幸福論より
「人間にとってもっとも楽しい時間は、苦労はあっても人と協力しながら、自分の意思でできる仕事に携わっているときでであろう。」
「苦労はあってもやりがいのある仕事に没入していれば疲れは感じず、心も軽やかだ。」
ラッセルの幸福論より
「仕事を楽しむことができれば、幸福になれる。」
「首尾一貫した目的だけでは、人生を幸福にするのに十分ではない。しかし、それは、幸福な人生のほぼ必須の条件である。そして、首尾一貫した目的は、主に、仕事において具体化されるのである。」
さらにラッセルは仕事を楽しむ秘訣を2つ挙げています。
一つ目は、技術を行使すること。自身の持っている技術を高めようとして取り組むことで、何事にも没頭できるといいます。
もう一つは建設性という要素です。これは何かものを作り上げていく、そしてその中で得られる喜びです。
作業療法を取り組んでいる対象者の姿に上記の要素を確認することができると考えています。
セラピストのガイドを受けながら、不自由な身体を自分のものにしようとする姿、不自由な身体を使って懸命に生活動作を獲得しようとする姿、手芸やクラフトに取り組む姿などは、いずれも疾病や機能障害に起因した戸惑いや不安などからいっとき離れて、今の身体、今の作業に没頭する経験であると考えます。
幸福を促進する作業療法とは、今の身体、今の作業、今の経験に対象者を導き、その世界から対象者自身が未来の人生を切り開いていけるようサポートするものではないかと僕は考えています。
次回作業療法士のための幸福学〜その⑥〜ではポジティブ心理学について取り上げていこうと考えています。