作業療法士は対象者の健康と幸福を促進するリハビリ専門職です。
健康については疾病や障害という概念を通じて理解を深めている作業療法士ですが、幸福についての教育、理解は十分でないというのが僕の意見です。
したがって幸福を促進する作業療法を提供するために幸福に関する情報、知見を自己研鑽している必要があると感じています。
今回は以下の書籍に基づいて幸福と同意義として使われている「ウェルビーイング」という概念について以下の書籍に基づく知識、情報をまとめていきます。
「ウェルビーイング」は直訳すれば「よい状態」となり、ウェルビーイングには3つの領域があると提唱されています。
1つ目の領域は「医学的ウェルビーイング」
心身の機能不全がないか、病気でないかを問うものとされています。
2つ目の領域は「快楽的ウェルビーイング」
その瞬間の気分の良し悪しや快不快といった主観的な感情に関するものとされています。
最後3つめは「持続的ウェルビーイング」
人が心身の潜在能力を発揮し、意義を感じ、周囲の人との関係の中でいきいきと活動している状態を指す包括的な定義とされています。
そして近年は3つめの「持続的ウェルビーイング」に関する構成要因が複数の研究者から提案されています。
デシとライアンによる「自己決定理論」では、「持続的ウェルビーイング」の要因について以下の3つの要因が重要であるとしています
①自律性 何かを自分の意思に基づいて行なっている
②有能感 それを成し遂げる能力が自分にあると感じる信念
③関係性 他者に受け入れられているという感覚
ポジティブ心理学の提唱者セリグマン による「PERMA理論」では、以下にあげる5つの要素をバランスよく満たすことがウェルビーイングの実現に必要であるとしています。
①Pポジティブ感情 ②E何かに没頭していること ③R周囲とのよい関係性 ④M意義を感じること ⑤A達成感をもつこと
ハパートとソーは10の状態、①有能感 ②情緒的安定 ③没頭 ④意義 ⑤楽観性 ⑥ポジティブ感情 ⑦良好な人間関係 ⑧レジリエンス⑨自尊心 ⑩活力をウェルビーイングの要因として提案してます。
またラファエル・A・カルヴォらはウェルビーイングの要因を 3つ提案しています。
①ポジティブ感情や自己認知(動機付け、楽観性、没頭、マインドフルネスなど)に起因する「個人内要因 」
②他者との関係性に起因する「個人間要因」(感謝、共感、思いやり、利他的行動など)
③個人を超えた「超越的要因」(意義、社会的責任など)
作業療法士は3つのウェルビーイングの領域を知っておくことで対象者の状況に応じたウェルビーイングの支援が可能になると考えます。
そして「持続的なウェルビーイング」の構成要因を知っておくことで、どの要因を補完、強化することが対象者の長期的な視点での自立や幸福につながるのかをリーズニングする手がかりを与えてくれると考えています。
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