作業療法士の為の幸福学、今回は日本人による幸福学研究を紹介します。
これまで紹介してきた幸福に関する知見はすべて欧米の論者によるものでした。
一般に個人主義の強いイメージのある欧米の幸福に至る考え方を、そのまま日本人に適応させてよいものかという疑問が湧く方もいるかと思います。
日本人による日本人を調査対象にした幸福研究の知見を紹介します。
今回の知見は前野隆司という元来ロボット工学の研究者によるものです。
前野さんは科学技術の発展がもたらした日本の実質GDPの増加と日本人の生活満足度が比例していないというデータに衝撃を受けて、ロボット工学の研究から幸福の研究に転身したという経歴のある方です。
前野さんは幸福の形は人それぞれバラバラであるけれども、誰もが共有できる、統合された幸福のイメージ、幸福になるための基本メカニズムを学問的に明らかにして、広めていくことに取り組まれています。
そして日本人1500人に対して幸福感に資する心的要因に基づくアンケート調査を実施、そのデータを統計解析(多変量解析)する手法で、幸福の4つの因子を導き出しています。
幸福の4因子は
①「やってみよう」因子:自分がやりたいことに取り組めている中で、努力、成長し、成長の実感と自己実現、達成感を得ることができる。
②「なんとかなる」因子:前向き、楽観思考に基づいてリスクを取りながら新しいことに挑戦できる
③「ありのまま」因子:過度に他者との比較をしないで自分らしさを発揮できる
④「ありがとう」因子:他者との繋がりと感謝する、される関係性
前野さんが導き出した幸福の4因子は、ポジティブ心理学を提唱したセリグマンのPERMAと重なる点が多くあります。
ポジティブな感情、自己実現と達成、良好な人間関係は欧米人、日本人ともに幸福のための共通要素となるようです。
作業療法の場面では訓練を取り組む中での対象者の表情はポジティブか、取り組んでいる訓練課題、目標は対象者の自己実現に基づいているか、挑戦的でやりがいのある達成的なものか、そしてスタッフ、家族の支援も含めて良好な関係性のなかでサポートを受けているかという視点が、幸福を促進する作業療法に寄与できるのではないかと考えています。
ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)
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