作業療法士の為の幸福学、今回はラッセルの幸福論のエッセンスと作業療法との接点について述べてみようと思います。
バートランド・ラッセル(1872〜1970)はイギリスの数理哲学者(晩年は平和活動家としても仕事をしています。)で、幸福論を1930年(昭和5年)に記しています。
アランの幸福論は文学的ですが、ラッセルのそれは合理的、実用的な論述をしているところが特徴です。
ラッセルの幸福論のエッセンスは「幸福の秘訣は自己没頭することではなく興味、関心を外界に拡げ没頭すること」と言えるでしょう。
ラッセルもアラン同様考える過ぎること、つまり自己没頭することは幸福に繋がらないと言います。
「自己没頭は、治されるべき病気の一部であって、それというのも、調和のとれた性格は外に向かうべきものだからである。」
「多くの人びとも、エネルギーの大部分を費やしている内面の心理的葛藤から解放されるならば、熱意を持ち続けることができるだろう。」
「自分の不幸の原因を考え続けている限り、依然として自己中心的であり、ために、この悪循環からのがれることはできない。」
ラッセルは幸福論の1部で不幸の原因として競争、退屈や過度な興奮、ねたみ、心理的疲れなどを挙げて、それらに内向的に向き合うことの弊害を述べています。
そして2部では幸福をもたらすものとして、興味関心を外界に拡げ、自身の快楽を社会と調和した形で求めていく人生のあり方を提案しています。
「あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そしてあなたの興味を惹く人や者に対する反応を敵意あるものでなく、できるかぎり友好的なものにせよ」
「人間、関心を寄せるものが多ければ多いほど、ますます幸福になれるチャンスが多くなり、また、ますます運命に左右されることが少なくなる。かりに1つを失っても、もう1つにたよることができるからだ。」
「人間は、情熱と興味が内へではなく外へ向けられている限り、幸福をつかめるはずである。」
「自我と社会とが客観的な関心や愛情によって結合されていないとき、両者間の統合の欠如が生じる。幸福な人とは、こうした統一のどちらにも失敗していない人のことである。自分の人格が内部で分裂もしていないし、世間と対立してもいない人のことである。」
アランの幸福論で述べた時同様、作業療法の対象者は、心身および環境の制約の中で、ともすれば自己没頭の世界に引きずり込まれている状態かもしれません。
そのような対象者に僕たちができることとして、安全を担保した上で外の世界に関心を向ける働きかけをすることであると考えます。
作業療法士は対象者の心身機能とあわせて興味や関心も評価します。対象者の過去・現在・未来の興味関心を丁寧に把握し、それに沿ったサポートを提供することが幸福を促進する作業療法につながると考えてます(^-^)
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次回はヒルティの幸福論のエッセンスを紹介し、作業療法との接点について述べていきます。